実践的な話になりますが、もし皆さんが作詞家になってコンペ情報をもらったらまず何をするのか?
とにかく手当たり次第に書き出しますか?
それとも作りためておいたストックの中で合うものを探しますか?
アーティストを知ることの重要性
気持ちがはやって、意外と見落としがちなこと。
しかし歌詞を書き始めるにあたって何よりも重要なこと。
それは「対象アーティストのリサーチ」です。
誰もが知っているような情報だけではなく、
出来るだけ深くて、細やかな情報まで調べる必要があります。
- そのアーティストのファン層、ターゲット層
- 今までリリースしてきた楽曲のタイプ
- アーティスト本人の好みの傾向
- どのような考えを持った人物か
など、知れる情報は何でも集めます。
TwitterやFacebook、Instagramなど、SNSの普及のおかげで、アーティストの考え方など
個人的な情報も、以前より容易に手に入るようになりました。
「個人的な嗜好まで知る必要は無いのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし昨今、アーティスト本人が次回の楽曲を決める、と言うことがとても増えてきています。
ただお人形のように歌を歌うだけではなく、自身を表現しようとするアーティストが多くなっているのです。
私の過去の採用楽曲の中にも「本人が気に入ったので」
という理由でコンペを勝ち取った楽曲があります。
これは実は作詞家にとって実に嬉しいことです。
アーティストを「知る」ことこそが、良い歌詞をかく第一歩
だと思って下さい。
募集概要を、独自の目線で深く掘り下げる
アーティストのリサーチの次にすることは、「募集内容の熟知」です。
コンペ情報はメールで送られてきますが、そのメールには
- 対象アーティスト
- 募集の概要(歌詞のテーマ等)
- 参考楽曲
- 締め切り
などが書かれており、対象楽曲の音源が添付されています。
(コンペで「詞先」というのはとても稀で、楽曲が事前に決定していることがほとんどです。)
ここで大切なのが「募集の概要」です。
例えばこのようなことが書かれています。
募集概要の一例
◯田◯美、10月リリース予定のシングル曲です。
【歌詞のテーマ】
・10代の女性目線
・おおまかなテーマは「恋愛」
・アイドルソングなのでキラキラ感は必須。
・サビで繰り返されるメロディにはキャッチーな言葉が欲しい。
・ライブで盛り上がるもの
これは一例であり、もっと細かな要望がビッチリと書かれているものもあれば
かなりアバウトな内容のものもあり、コンペによって様々です。
この内容をみて、楽曲を聞き、いざ作詞作業が始まります。
ここで大切なのが
募集概要のみを指針としないこと。
「歌詞のテーマ」が書かれているので、クライアントはこの通りの歌詞を求めている
そう思うのは危険です。
いうなればこの情報は全てのライバル達にも送られているわけです。
この情報だけを鵜呑みにして制作に入ってしまうよりも、少しでもライバルから抜きん出るための努力をする
戦いは、実際に歌詞を書く前からすでに始まっているのです。
ライバルたちを出し抜くために
『アーティストリサーチ』にも関わってくることですが、
依頼主(アーティストや音楽会社)がいて、その人に自分の作品(歌詞)を買ってもらおうとする状況において、
依頼主や、依頼主が欲しているものに対して「知りすぎて損をする」ということは決してありません。
出来る限りの情報を集め、その情報を元に「本当は何が欲しいのか?」を追求する。
この1つのステップが、ライバルとなる作詞家との差をつける重要な「努力」となるのです。
送られてきたコンペの募集概要を、独自の目線で深く掘り下げる。
本当にコンペを勝ち取りたいと思うならば、この努力を惜しまないようにしましょう。
by 純乃 吟 ( PRODUCERS,INC )
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